好血圧だより

血圧をネタにする不真面目なブログです

入院中の思い出を語る その9

ICUで目覚めると・・・。

ああいうのを、せん妄というのでしょうか? 意識が無いまま手術室に放り込まれ、麻酔から覚めてもまだ夢の中にいるような不思議な感覚でいたのが、ICUでの何日間でありました。

まず、手術が終わってはじめて目が覚めると、ベッドの横に手術着を着た “くまモン” が立っていて、渋ゥーいバリトンで話しかけてきました。

「病院にいるのわかりますか? 手術うけたのわかります?」

これが我が主治医。今もお世話になっている先生との出会いであります。

また、夜になると点滴の袋が行燈のように光り、それが点滅するので「点滴はボンボリにもなるんや」なんて、ボンヤリした頭でヘンに感心したりしました。

さらにケッタイなことに、ある時わたしはICUにいながら大海原にあおむけに浮かび、水平線から立ち上がる真っ白な入道雲と青空に「フィジオ140」という点滴袋の文字や目盛りが左右逆に写っているのを眺めていました。同時に、点滴の袋越しに液面に小さな虫のように浮いている自分を俯瞰しておりました。ふたつの幻影をかさねて見ていたのです。いつぞや「点滴の海に浮いてる命かな」という、マズい句のメモ書き写真を載せましたが、あれはこの奇妙な光景をそのまま詠んだものです。

今にして思えば明らかに異常な精神状態ですが、当時はくまモンもボンボリも大海原も、現実なのか夢なのか何なのか、よくわかりませんでした。夢なら時間がたてば忘れてしまうものですが、何年も経ったいまでもはっきり覚えているということは・・・。やはり幻覚だったのかな。

フェンタニル」と「アルチバ」は麻薬だそうで

退院後、自宅療養中のヒマにまかせて診療明細書に載っている薬をインターネットで調べますと、全身麻酔に使われる薬とはなかなかタイヘンなものであることが分かりました。「エスラックス」は筋弛緩薬。昔、仙台でこれを使った殺人事件がありました。「プロポフォール」は鎮静剤ですが、かのマイケルジャクソンはこれの中毒で亡くなっております。「フェンタニル」と「アルチバ」は鎮痛剤で、いわゆる医療用麻薬です。アメリカではフェンタニルの乱用が社会問題になっているそうで、ミュージシャンのプリンスはこれの過剰摂取で死亡しました。

そういうクスリを使われていたとは知らなんだ。ひょっとして、あの時わたしゃ合法的にラリっていたのかもしれません。

いそいで付け加えておきますが、もちろん日本の病院では麻酔薬は非常に厳格なルールで慎重に使用されますから、中毒になる心配はまずありません。これから入院や手術をうけるひとは、どうか安心して頂きたいのであります。

 

入院中の思い出も、在庫がわずかになってきました。そのうち、残り少ない続きを書きますのじゃ。では・・・