好血圧だより

血圧をネタにする不真面目なブログです

超低体温循環停止法

なんでー???

ついこの間まで暑い暑いでヒーヒー言うてたのに、なんだか、秋を通り越して突然冬になったような寒さですなあ。皆さん、風邪ひいてまへんか? 

じつは今回、少々の寒さではないハナシなのです。なんせ「超低体温」ですから。どうか暖かくして読んでください。

一体なんのこっちゃ? と思われた方は、当ブログをいくらか遡り「上行大動脈人工血管置換術 その2」という記事をご覧ください・・・・はい、読みましたね?

大動脈解離の手術では、患者の心臓を一旦停めて血液の循環をストップさせちゃうのです。心臓が動いたままで血がドクンドクン流れていては、その大動脈をちょん切って人工血管に交換するなんて、不可能ですからな。ですから、ベテラン看護師さんが「ボロくなった水道管を取り換える要領」といったのは、じつに正確な表現だったのヨ。水道工事のときって、一定時間必ず断水しますもんね。あれと一緒です。

ほいじゃ、なんで循環停止の前に体温を下げる必要があるのか? これは我々のからだに備わった、マカ不思議さからくるのです。

人間は血の循環がとまると脳細胞が酸欠で壊れ、救命処置をしない場合、常温だと10分間でほぼ100%が亡くなるそうです。ところが、外国では凍った川や湖に落ちて沈んだ人が、1時間たって引き上げられても蘇生することがあると、昔から知られていたんですと。不思議ですが、たいてい「こりゃ天使ミカエルのご加護だがや」という具合に思われていたんでしょう。

しかーし、昔々ある所で、ある偉い先生が「体温が極端に下がると代謝、つまり酸素や栄養の必要量も下がるに違いない。だから溺れても脳や内臓が守られるのだ」と考えついた・・・らしい。「だから患者を冷やして循環停止すれば、常温では不可能な複雑で時間のかかる心血管手術も安全にできるはず」と考えついた・・・らしい。これこそが「超低体温循環停止法」開発のきっかけであった・・・らしい。プロジェクト X のはじまりであった・・・のかな? まあそういうコトにしておこう。

爾来、世界中の医学者が文字通り心血をそそぐ研究努力の日々が続きました。そして1965年、ついに人工心肺と超低体温(20℃以下)を併用する手術法が日本の研究グループによって開発され、世界に紹介されました。これにより、心血管手術の安全性が飛躍的に向上したのであります。

おかげで世界中のたくさんの患者が救われ、わたしもその中に含まれているわけです。ああ、なんと感動的な!(そうでもない?) ちなみに、体外循環の技術はECMO(エクモ)という装置に応用され、これまた多くのコロナ重症患者を救っております。やはり無理にでも感動してください。

 

「カラダ冷やせば病気治るんですか?」

そういう問題じゃありません。裸で寝て風邪ひかんように。

お大痔に。