かつて手術を受けた病院に、数ヶ月に一度かよっています。薬の処方箋をもらうのが目的の、いたって呑気な通院であります。
先日、その病院のロビーで、今まさに退院してゆく患者さんを見かけました。ご家族に囲まれ、晴れやかな笑顔で病院の職員に挨拶し、ややおぼつかぬ足取りではあるものの、いかにもうれしそうに正面玄関を出ていかれました。
それは数年前の自分の姿そのもので、わたしは当時の情景から考えていたことまでを、ありありと思い出したのでありました。
あの日は雨でした。わたしは家に帰る車から見える春雨の夕景を、感慨深く、じっと眺めていたものです。ひとつ間違えば、地下の霊安室から病院の裏口を通って葬儀屋の車で帰るところだったのに・・・と、生かされている喜びをかみしめながら。
あの時、わたしはこれからの人生をこれまでとは違ったものにしよう、ときっぱり決心したのでありました。もう今までのようにのんべんだらりとは過ごすまいぞ。なにか意味のあることをしてやる。有意義に生きてやる。感謝だ、感謝して生きるのだ。誓って、決して忘れまい。忘れまいぞー!
で、キレイに忘れておりました。相変わらずダラダラしたり、相変わらずブツクサ不平を言ったり、病院できれいな女医さんを見て密かにニタニタしたり・・・なんちゅうテイタラクぞや。
自分でも呆れましたが、思い出させてもらったのを幸い、病院の帰りに寄り道して見た虹に、また新たに誓いなおしたのでした。こんどこそ忘れまいぞー!
・・・と書けばかっこエエけど、いつまで続くやら。
生きてるだけで丸儲けって、名言ですね。
お大痔に。