好血圧だより

血圧をネタにする不真面目なブログです

もう間に合わない夏休みの読書感想文  阿川さんち父娘編 その2

癇癪も師匠ゆずり?

志賀直哉はたいへんな癇癪もちで、妻子にそれはそれは苦労をかけたそうであります。

文学だけでなくそっちの薫陶まで受けたのか、阿川弘之大先生も家庭での暴君ぶりたるや、それはそれはヒドかった・・・というのは、よく世間に知られております。瞬間湯沸かし器という綽名があったのも有名ですね。

『タタタタ旅の素』には、父の横暴ぶりに耐えかねた佐和子さんが家出を試みるはなしがありますが、わたしはこれを読んだとき、世の中にこんなクソオヤジがホンマおるんか、と驚いたもんです。さらに『強父論』を読むに至っては、その破天荒なワガママお父ちゃんぶりに、完全無欠にあきれ果てました。作家としては尊敬しますが、家庭人としてのアガワヒロユキは完全無欠に落第です。

わたしが小学校低学年だった頃の教科書に『きかんしゃ やえもん』という童話が載っていました。「怒りは我が身を亡ぼす」ということを子供に教えるはなしでしたが、大人になってからあれは阿川弘之作であったと知って、ひっくり返ったもんです。アガワ先生、自分のこと棚に上げてよくあんなモン書けましたな。

うろ覚えですが、吉行淳之介だったか遠藤周作だったかが「阿川の妻子はノーベル平和賞に値する」とかなんとかいったとか。大賛成です。ワシなら出刃包丁とか金属バットで反乱起こすとこですワ。

しかし、です。阿川一家はべつに家庭内戦争を起こすでもなく、ワガママお父ちゃんが94歳で大往生をとげるのを暖かく見送るのですな。やはり、その家族でないと分からないその家族ならではの情愛というのがあるのだな、と教えられたのでした。幸いなるかな、阿川家。

ただ一つ気懸りなのは、父が娘に「お前は俺にそっくりだ」といい、本人も周囲もそれを認めているということです。そっくりって・・・「タタタタ大変の素」?

 

食いしん坊で食に関するエッセイが多いのは、この父娘に共通しています。その分野に限って言えば、娘さんの方が優っているとわたしは思います。『残るは食欲』を読んでいるとたまらなくハラが減ってきますが、『食味風々録』では残念ながら、そこまでは没頭できませんでした。佐和子さんの文章は御父上に厳しく指導されただけあって、シンプルで小気味よいテンポを持っており、志賀直哉の系譜に恥じないものです。そして古今第一等の対談の名手であることは、いうまでもありません。ただその小説については、わたしゃ全く読んでいないので何もいえません。中途半端な読者ですみませんです。

 

この秋は、お父さんの三提督ものと、娘さんの食べものエッセイを読み返してみようと思います。食欲と読書の秋、一挙両得でまた太るデ。

お大痔に。