好血圧だより

血圧をネタにする不真面目なブログです

ホタルの夜

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ナンと、ひとり占め!

農業用水路、といったほうが似合う小川に、小さな黒い巻貝がたくさんおりました。例によって散歩の途中に見つけたのです。ひょっとして、ありゃホタルの幼虫のエサになる貝とちゃうやろか。もしそうだとすると・・・。よし、夜にまた来てみよ。

・・・日が沈みました。蚊よけスプレーをたっぷり吹き付け、腰には蚊取り線香までぶらさげて、再びおなじ場所に出陣です。カジカが涼しい声で鳴きだしました。晴れた空にはまだ明るさが残っておりまして、いささか手持ち無沙汰。・・・そういや、蛍狩りを詠んだ句でエエのがあったなあ、あれ、なんやったっけ? 女流俳人のなんとかってヒトの作で、ええと・・・下五がたしか蛍の夜ってやつ。好きな句やったのに忘れてしもたがな・・・。

頼りない記憶をあさっているうちに 、ようやく残照が消えて辺りは真っ暗。月のない週末です。このへんは街灯は無いし車が通る道路からも少し離れているので、ホントに暗い。懐中電灯もってきて良かった。でないと帰り難儀するとこやったわい・・・と、そのときです。

「あ!」 おもわず声がでました。川の上を、かぼそい光がす~っと飛んだのです。

「でたあ!」 いやオバケじゃありません。ホタルです。気付くと草の上にも光ってるのがいます。もう一匹あそこにも、あ、ここにも。そっちにも。いやいや、どんどん増えまして、見まわすともう、周りじゅうホタルだらけ! 我ながらよくぞこんな場所みつけた。昼間なにげなく覗いた川がホタルの楽園だったとは! いやはやボーゼンです。ホタルの乱舞とカジカの声につつまれて、まさに夢見心地で立ち尽くしておりました。

ホタルの名所というのが各地にあって、シーズンになると賑わうようですが、ここはそんな場所ではありません。地元の人も知らないのか興味がないのか、私のほかにまったく人がいません。この夢のような状況を完全に貸し切りでありまして、ほんとゼイタクな気分。都会の “たわまん” とやらに住んどるお金持ちにも、この気持ちは分からんですやろ。

・・・どれくらいそこに立っていたのでしょうか。まだホタルの集団見合いはタケナワですが、蚊取り線香が燃え尽きました。痒いから帰りましょう。

この場所のコトを誰かに話したいと思いましたが、やめておきました。私がへたにしゃべったら、おそらくここは楽園でなくなってしまうでしょう。SNSなんかでバラされて、あっというまに人々がどっと押し寄せ・・・違法駐車とゴミの山が目に浮かびますワ。

 

 ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜  桂信子

 

帰ってから蚊に刺されたとこにムヒ塗っていて、思い出しました。蛍狩りデートの句でした。ロマンチックで艶っぽい、ちょっとエロっぽくもある句ですなァ。好きやなァ。でもすぐ忘れるんじゃなァ。アホやねェ。

ワシの蛍狩りは善意の独り占めということで、お大痔に。